第76回 アサヒ北海道写真展 講評
審査講評
全日写連関東本部委員 戸塚喜八
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総評
この度も、長い歴史あるアサヒ北海道写真展の審査を、させていただきありがとうございます。 審査を終えて、特に感じた事は、モノクロ作品上手さと、高校生の皆様の写真の実力が、前回の審査より、数段アップした事に驚きました。青春時代の楽しさや、悩みなどを素直にカメラを、通し作品に表現できる高校生の感性に驚き、羨ましく思えました。構図 露出やピンともしっかりとしているので、顧問の先生方のご指導の成果なのかと思い、あらためてお礼申し上げます。
会員・一般部門は、北海道の大自然を活かした風景や動物写真が多くネイチャーフォトの実力の高さを感じました。
高校生部門は、スマホ感覚で撮影した作品もあり、写真が自由に楽しく身近に撮れる時代に入ってると感じがしました。作品の内容も一般の部門に負けない素晴らしい作品もあり楽しませてもらいました。 -
朝日大賞 「漂着」 大川 稔夫さん
不思議な物体ですが、よくみると海岸で見られる浮きですね。でもこの浮きは、神社の鈴にも見えて神秘的で、存在感抜群です。くすんだ黄色の色合いの浮きと黒い砂のコントラストが良く、白波と、かがやく青い海で画面の奥行きと視線を誘導しています。巧みな計算つくされた秀逸な作品です。そして、スローシャターで揺れる鈴の綱が神社の紙垂にも見えて荘厳さを増しています。露出、構図、プリント、撮影時間帯等どれをとっても完璧な素晴らしい大賞作品です。
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朝日準大賞 「昆布漁師」 渡辺 勝さん
カッコイイ男性で、まるで男性モデルが、ランウェイを見栄を切って歩いているかのようです。口にタバコを加えて上目使いに見た視線の先が気になります。バック白波と砂浜が黒く光ってかがやき、その舞台を盛り上げています。右の上の人物が被ったのが、すこし残念ですが、それ以上素晴らしい秀作です。
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優秀賞 「スワン」 吉田 守登さん
スローシャターで表現された波が霧のようになり、幻想的な雰囲気と神秘的な湖の物語を表現しています。秋の訪れで寂しくなったボートハウスの印象風景を的確に表現した秀作です。広角レンズ撮影したバックの空の広がりも、湧き上がるようで素晴らしいです。
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優秀賞 「あっ、食べられた」 若山 美穂子さん
サバンナで、ライオンが狩りをしているシーンかと思いましたが、狐が獲物を獲得して悠然と歩く姿ですね。日本でもこんなシーンが撮影できるのかと驚きました。バックの鳥たちが完全に気が付かず無視しているのは面白いですね。少し獲物の鳥が可哀そうかと思いました、昔のおとぎ話を絵に書いたような作品なのでこの後に、ずるい狐が賢い鳥たちに、仕返しされ騙されるのではないかと余計な心配をしていました。見た人を、楽しくさせる作品です。
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優秀賞 「白黒つける」 秋山 高之さん
モノクロ写真良さを熟知した上手な作品です。無駄な色を亡くした分、この鳥の広げた綺麗な羽の色合いのコントラストを想像力で強く湧き上がります。そして、二羽のシギにも ジャマな周りの色が無いぶん焦点が当たりいっそう迫力がまして見えます。再現性を重視した動物図鑑的な作品です。
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優秀賞 高校生の部 「拳」 城谷 彩葉さん
この拳は、怒りの為、悲しみの為、そして自分に対して、もしくは誰に対してなのか気になります。モノクロで情報がないのと空間が多いために、いっそう疑問?が多くなって、気になってしまいます。そんな見る人達の深層心理を、巧みに操り城谷ワールドへ引き込んでいきます。そんな作者のカメラワークに脱帽です。